東電原発事故 10年で明らかになったこと

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東日本大震災における福島第一原発事故は本当に「想定外」の災害だったのか。本書では事故後の裁判で明らかになった資料を中心に、事故前の東電の津波対策を明らかにしていく。東海第二原発は東日本大震災前に新たな津波対策を終えていたため事故を免れた。
「貞観地震」における大津波をどう評価するで東電と他の電力会社で対応がわかれた。東電は地震専門家に根回しをして、専門家の意見を根拠に津波対策を先送りにしていた。事故後の裁判における地震の専門家の記述は首をかしげるものが多い。専門家の意見は事故とは無関係で、地震災害の予想はそもそも無理だということらしい。東電が福島第一原発の津波対策を先送りしていたのが明らかになっても、東電幹部は想定外とか知らなかったと言い続けている。
誰が事故の責任をとるのかいまだ明確になっておらず、自然災害なので仕方がないという雰囲気になっている。事故後発足した原子力規制庁と原子力規制委員会が以前の保安院と何も変わっていないように見える。福島第一原発で増え続ける汚染水は、処理した後に海洋放出することが決まった。本書を読んで驚いたのは田中俊一前原子力規制委員会委員長のインタビューだった。今ごろこんなこと言われても遅すぎなのではと思った。結局、福島第一原発事故後も「原子力ムラ」は何も変わっていないのか。

-原子力政策のどこがまちがっていたのでしょう 
田中:日本の原子力政策は嘘だらけでここまでやってきた。結果論も含めて本当に嘘が多い。最大の問題はいまだに核燃料サイクルに拘泥していること。使用済み燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして一千年、二千年分の資源を確保するという罠に囚われたままである。一千年後の世界がどうなっているかなんて誰にもわからない。技術的にもサイクルが商用レベルで実用化できる可能性はなく、現に米国、英国、フランスが断念している。 
-ではなぜ、いまだに核燃料サイクル路線を放棄しないのでしょう。 
田中:いままで「数千年のエネルギー資源が確保できる」という嘘を言い続けてきたからだ。日本の原発はそうした嘘で世論を誤魔化しながらやるという風土があった。そこにつけ込まれて、今回のように、原発マネーを狙う汚い人間が集まってくる原因にもなった。

著者 : 漆田孝史
出版社 : 平凡社
発売日 : 2021/02/
新書 : 224頁(平凡社新書)
定価 : 本体840円+税

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